唯一の女性議員を追放した藍住町議会

評論家 三井マリ子氏

阿波踊りで、にぎわう徳島。その徳島県藍住町のたった1人の女性議員西岡惠子議員の失職が決まった。 8月11日、臨時議会が開かれ、資格審査特別委員会から出された議案が賛成多数で可決成立したのだ。徳島県で女性への暴力根絶のために活動を続ける東條恭子さんは、議会を傍聴した。彼女からメールが届いた。「『光熱水費の使用が少ないから藍住町に居住している裏づけがない』と、結論付けた資格審査特別委員会の決定に対して、議員15人のうち11人が賛成の起立をしました」東條さんは、人権問題・環境問題に造詣の深い西岡議員の仕事ぶりを高く評価する。西岡議員は、女性への暴力根絶をめざして、東條さんたちとともに活動してきたという。だから東條さんは、議会の動きに疑問を抱き、委員会にかけられる前にまっさきに抗議の声をあげた。東條さんは言う。

「西岡さんが男性だったらこんなことは起こらなかったのでは。封建的な女性軽視・蔑視体制を何とかしなければ」

藍住町は、女性が男性と同じパートナーとしてあらゆる分野に参加できるようにする・・・、などと定めている。立派な印刷物も出ている。「男女共同参画プラン」だ。

男女共同参画プランは、国の法律「男女共同参画社会基本法」や、日本政府が批准した「女性差別撤廃条約」にのっとって作られた。

「男女共同参画社会基本法」や「女性差別撤廃条約」に流れるのは、「男が決め、女は従う」とされてきた性役割分業社会は歪んでいる、だから変えよう、という精神だ。東條さんが取り組んでいる女性への暴力も、この歪みと関係がある。「男は上で、女は下」とみなす男性はまだ多い。そういう男性は、女性は自分の所有物だから何をしてもいいと考えがちだ。つまり、こうした男と女の間の支配構造が変わらない限り、殴打され殺害される女性は後を絶たない。藍住町の今回の決定 (光熱水費が少ないので在住してない、だから議員資格なし)に、似たような暴力性を、私は感じてしまう。藍住町の男性議員には、「男が決め、女は従うもの、女にはこのくらいのことをしてもどうってことはない」と思っている人が多いのではないか。とはいえ、徳島の女たちの怒りののろしは、消えないだろう。かならずや徳島を変えてゆくに違いない。

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